尾上の松の軌跡!?

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著名な演奏家の軌跡とは月とスッポンですが、私にもこれまで演奏してきた1曲1曲に書き入れないくらい密度の濃い思い出があります。そして、その思い出と共に僅かながら成長してきました。

古典曲「尾上の松」という曲は、そんな私の代表的なメモリアル曲と言っても過言じゃありません。
三味線にしろ、箏にしろ、この曲は技巧的に難曲ですし、場面転換が多く、お目出度くもあり、華やかでもあり、雅びでもあり、風格もあり…etc、とにかく一言では言い尽くせない大曲です。

私の師匠はよく、「やりたい曲と出来る曲は違う」と仰っていました。そしてまた一方、「その時、その歳にしか出せない音や表現がある」とも仰ってました。そのお言葉を勇気にして、無謀にもこの「尾上の松」は、これまで数多く勉強してきました。古典曲の中では一番演奏機会も多いかと思います。     この曲ほど、三味線と箏、両方のパートに精通している曲は他にないってほど、どちらのパートもよく弾いています。

それだけに、甘酸っぱい青春の思い出や、赤面物の恥ずかしい思い出も数々あります。

本番中に箏柱を倒してしまった経験は、これまで一度しかありませんが、それが初めてこの曲を演奏会で発表した時でした。咄嗟の事でしたが、とても空恐ろしく、みっともなく、穴があったら入りたくなる心境ながらも、進めば進むほどに入り組み難しくなっていくので破れかぶれ最後まで弾ききった冷や汗ものの思い出です。そんな今となれば笑い話の悪夢に始まり・・・・

大学院生の時には、出来立てホヤホヤの新奏楽堂で優秀な後輩の大切な大舞台の助演でこの曲(三味線)を弾きましたが、弾き始めて30秒も経過しないうちに三味線の糸が切れてしまい、止まる訳にもいかず、まさかの大学備品の替え楽器で演奏したこともあります。この時も憂鬱そのものでした。。。このことは不可抗力とはいえど今でも申し訳なかったと反省して心を痛めていますが、この経験がきっかけで、今の私の相棒(通称:きよしくん)との出逢いに結びつきました。

今から7年前には、古典のオーディションに合格して主演CDを記念に作って頂きましたが、そこにもこの曲を収録しています。
この収録日は、今までで一番コンディションの悪い状態での収録となってしまい、それこそこれ以上の悪条件ってないだろうな・・・と遠い目をしながら苦笑してしまうほどです。
スタジオに居る全ての自分以外の方が、卓越した本物の巨匠で、そこに何故かド素人の自分が紛れ込んでおり、一人でたじろいでドキドキしていて、あの神聖なプロの現場になんと自分が似合わないこと(爆笑)!
今思えば、あの絶不調の半分は、そんな緊張から知恵熱?が出たのかもしれません(爆笑)!
いやはや、良いお勉強をさせて頂きました!!!!!

近々(8月20日)に、この曲を久しぶりに演奏するに際して、そのCDを思い切って聴いてみました。自分のCDは今でも聴くのが恥ずかしく、怖いようで見るだけなのですが、思い切って聴いてみました!
色~んなことを思い出して、胸が熱くなりました。7年前には気が付かなかったこと、伝えられなかったことなども浮かんできて、今更ながら、財団の皆さんや先生や音響技術の皆さんやスタッフの皆さんや、その他大勢の人達に「ありがとうございました」という想いをグルグルさせながら聴きました。

今も、あろうことか、またしても体調が低迷しているので、また神様が私に試練を与えて下さったのか~っと、毎回毎回、この「尾上の松」を演奏するに際してのアクシデントが到来しそうな予感に感慨深くもあります。(がしかし、養生しなくては!!!!!)

古典を演奏する時、不思議なことに、出来立てホヤホヤの新作を奏でる時以上に、新しい自由な感覚?ジャズ的というか・・・、ご一緒するお相手とのセッションの妙味を楽しめる要素がふんだんにあると私はいつも思います。それだけに、同じような感覚で一騎打ちの出来るお相手と演奏出来た時、本当に快感です!楽器も活き活きと喜んでくれているのが分かると、すごく幸せになれます!

今回は、ずっと以前から変わらずに人間的にも、音楽的にも尊敬する岡田道明氏と、そしてこの度初共演のマクイーン時田深山さんとの三曲合奏です。とても楽しみです♪♪♪

一期一会の精神で、また一つ、出来れば穴を掘らずにすむ心地よい思い出が増えると嬉しいです。少なくとも、体調のことでパートナーに迷惑を掛けたくない!と切に願います!

CDは、師匠の名言を借りれば、それこそ「若気の至り」の「荒削りで拙い爪音、歌声」ですが、もう今やろうったって出来ないフレッシュな演奏が恥ずかしくも、皆さんにお聴き頂ければ励みになります。

なかなか古典を表立って発表したり、ご意見を仰ぐ機会に恵まれませんが、有難くもCDを作って頂けましたので、多くの方にお聴き頂き、ご指導頂ければな・・・・と思っています。

「おや!?声がおばさんになったな!」などなど、今の演奏との比較もして頂きたいです(笑)。古典って退屈でつまらないと仰る声をよく耳にしますが、私は子供の頃から妙に好きでした(笑)。聴けば聴くほど、やればやるほどに斬新で奥が深く、ハマります。

 

なんか宣伝みたいになってしまいましたが・・・・